studio in.K.のオンライン稽古とそれを実現するためのツール・方法の紹介

こんにちは、制作の伊藤失格です。

新型コロナウイルス感染症対策として、studio in.K.では一箇所に集まっての稽古を原則として中止しております。しかし新型コロナウイルスの流行はとどまるところを知らず、稽古再開がいつになるのかも見通しが立たない状況。

そんな折、IT企業を中心に「リモートワーク」や「テレワーク」と呼ばれる取り組みが活発になってきました。演劇活動は同じ空間で活動することが重視されるため、オンラインで何かをやるのは難しいと考えていたのですが、先の見えない状況を少しでも改善すべく、最近はオンライン稽古に取り組んでいます。

その取り組みの一部を、KKTさんに取材していただきました。

ミュージカル劇団がオンライン稽古(熊本県)

上記記事の中では、KKTで放映された特集動画も見ることができますので、お時間のある方はぜひご覧くださいませ。

取材していただいたのは、ZoomというWeb会議システムを使ったオンライン稽古についてです。最初は不安もあったのですが、今はかなり楽しくやれており、むしろオンラインだからこそできるメリットもあるなと感じられるようになりました。

また、一箇所に集まらなくても公演の準備が進められるように、studio in.K.では以前より様々な取り組みを行っています。オンラインで演劇活動を行うためにどんなツールを使っているのか、またそれらをどう使っているのか。そんなことを今回は紹介したいと思います。

オンライン稽古について

さて、まずは今回取材していただいたオンライン稽古について。

近年は携帯端末の回線も高速になってきており、カメラ・マイクの品質も向上しておりますので、気軽にテレビ電話が行えるようになってきました。実際にこれまでも、制作会議をLINEやSkypeで行ったこともありますし、過去にドラマ・トゥルクとして参加した作品で、稽古の内容をビデオ通話で見ながら、都度フィードバックを行ったこともあります。

2〜5人くらいまでの少人数であれば、かなり快適に稽古を行うことができると思います。もちろん動きを合わせるのは無理ですが、本読みで雰囲気を掴んでいくことは可能でしょう。

しかしstudio in.K.は人数が多く、かつミュージカル劇団なので、10人以上のメンバーで歌を合わせなければなりません。上記記事内の動画を見ていただければわかるのですが、お互いに微妙に遅延が発生しているので、その場で曲に合わせて全員で歌うのは無理があります。

それを解決するために、Zoomで説明をした後に各自で歌を録音、その音源をミックスして一つの合唱に仕上げて確認、という方式を取っています。ミックスをする過程で一人ひとりにフィードバックすることもできますし、全体の感じを把握することもできます。

そのほかにも、創っている作品に関係のある動画や曲、本などの内容を紹介して意見交換会を行うなど、オンラインでできる領域を徐々に広げていっているところです。

なぜZoomなのか

さて、テレビ通話をするためにはLINEやSkypeなど様々な既存ツールがあるわけですが、studio in.K.ではZoomを採用しています。これには、いくつかの理由があります。

まず使い方がとっても簡単だということ。発行されたリンクをクリックするとそのままブラウザでテレビ通話を開始することができますし、アプリをダウンロードすればそのアプリで開くこともできます。これまで10人以上のメンバーにZoomの導入をしてもらいましたが、大きく手間取ったことは今のところありません。

また、通信の品質が非常に良いことも魅力の一つです。他のソフトウェアを使うとたまにプツプツと音や映像が止まったりすることがあるのですが、Zoomではそのようなことがほとんどありません。今まで使ってみたものの中で一番安定していると思います。

また、最近はIT企業やスタートアップ企業を中心に導入が進んでいることもあり、調べれば情報がたくさん出てくることも魅力の一つでした。情報がたくさんあるサービスの方が、導入のハードルを下げることができます。

オンライン稽古のメリット・デメリット

仕方なくはじめたオンライン稽古ですが、実は良かったこともあります。

まず一つは、場所を問わずに参加できるということ。たとえば僕は東京に住んでいるので、普段の稽古には一切参加できないのですが、オンライン稽古なら他の人と同じように参加することができます。稽古において距離が問題にならない、というのはかなり大きなメリットです。

また、稽古を始めるために移動する必要がないので、稽古の回数を増やすこともできました。現在は、通常どおりの稽古の他にも任意参加の稽古の時間を設けており、週に数回集まる普段の稽古よりも、コミュニケーションの総量は増えているのではないかと思います。

もちろんデメリットもあります。演劇は身体芸術なので、やはりオンライン稽古では制約が多いです。踊りを合わせることもできないし、立ち位置を確認することもできない。これからもやり方の研究を重ねてできることの範囲は広げていくつもりですが、最終的には現場に集まらないと作品の仕上げはできないなと思います。

稽古時以外のやりとりについて

今回の取材はオンライン稽古についてでしたが、場所にかかわらず劇団の業務をどこでも行えるようにする仕組みづくりは以前より進めてきました。今回のZoomを使った稽古も、その延長線上にあるおかげでスムーズに進んだ部分もあるのではないかと考えています。

まず紹介したいのが、稽古以外でのやり取りについて。2年ほど前までは、LINEを使って様々な情報のやり取りを行っていました。しかしLINEは話題ごとにグループがどんどんと増えていき、そのほか私生活で使っているメッセージと混ざってしまうため、やりとりのスピードが遅くなってしまうという問題がありました。

そこで、studio in.K.関連のチャットツールを別に設けるこことし、それ以降はSlackを使っています。Slackは無料プランでも現在の規模(ぜんぶで30人ほど)であれば問題なく使えています。過去のメッセージの検索件数に制限がありますが、決定事項は他の文章に都度とりまとめていますし、半年分くらいは遡れますので、特に困ったことはありません。

チャットツールにもChatworkやTeamsなど様々なものがありますが、仕事などで使い慣れているものを導入するのが良いと思います。僕も仕事でSlackを使っているので、積極的に導入を進めることができました。どうやったら何ができるのかが分かりますし、逆に「これはできない」という弱点も分かっているので、うまく進めていくことができます。

文書の管理

チャットツールは素早い情報共有や意思決定ができる素晴らしいものですが、人間はすぐに忘れてしまうものです。そこで、決まったことや考えたことは、なるべく文書化することにしています。

一番よく使っているツールはScrapboxです。非営利団体であれば無料で使うことができますので、小規模な劇団であればまずは使ってみることをおすすめします。

Scrapboxは編集が簡単なWikiツールのようなもので、タグがとっても簡素なので誰でも簡単に書くことができます。また、ディレクトリ構造がなく、それぞれの記事のリンクで繋がりを持たせるようなサービスになっているので、難しいことを考えずにがしがしと書いていくのに向いています。また、リアルタイム編集機能がついているので、他の人と一緒に情報をまとめていくのにも向いています。大抵、議事録はこれで取っていますね。

もっとかっちりとした文章を書くときや、何度も校正を繰り返したりするときはGoogleドキュメントを使ったりもします。表の管理が必要なときはGoogleスプレッドシートも使います。制作メンバーがほとんどMacを使っているので、文章の作成にPages、表の作成が必要なときにはNumbersを使うこともありますが、そんなときはiCloud Driveを使うようにしています。

Google DriveでもiCloud DriveでもDropboxでもなんでも良いのですが、あらゆるファイルはクラウドで管理するのがおすすめです。「あれってどこにいったっけ?」と思ったときに検索すればすぐに出てきますし、ちゃんと更新していれば古いバージョンのものを参照してしまうこともありません。

おわりに

といった感じで、studio in.K.では稽古や制作をオンラインで進めています。

僕は熊本を離れて福岡で2年、東京で2ヶ月ほど過ごしていますが、色々な制作業務を行うことができています。また、オンライン稽古が始まったおかげで稽古にも参加することができるようになったので、もはや距離はあまり関係ないな……という気持ちが強くなってきています。

以上、studio in.K.での事例紹介でした!

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